コンサル業界とは|業界研究入門

コンサル業界のアイソメトリック図コンサル・人材
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コンサル業界とは

企業の問題解決のプロフェッショナル

コンサルティング業界は、「企業の問題解決のプロフェッショナル」として存在しています。例えるなら、企業の”お医者さん”のような存在なんです。

例えば、みなさんが体調を崩したとき、お医者さんに相談しますよね。お医者さんは、症状を丁寧に聞いて、検査をして、原因を特定し、治療方法を提案します。

コンサルティング会社も、同じような役割を果たしています。

企業には、以下のような様々な「症状」があります。

  • 売上が伸び悩んでいる
  • 社員の離職率が高い
  • 新規事業を始めたいけどどうすればいいかわからない
  • 海外展開をしたいが経験がない

こういった問題に対して、コンサルタントは

  1. まず現状を詳しく分析し(診察)
  2. 様々なデータを集めて原因を特定し(検査)
  3. 解決策を提案し(処方箋)
  4. 時には実行もサポートする(治療)

というように、専門的な知識と経験を活かして、企業の経営課題を解決するために存在しているんです。

コンサルティングの価値とは?

顧客に対して、コンサルティング会社は具体的にどんな価値を提供しているのでしょうか?

大きく4つに分けてみました。

  • 「専門知識」の提供
    • たとえば、カーボンニュートラルやDXといった新しい分野について、最新の知識や実践方法を提供します。経営者の方々は自社の事業に精通していますが、新しい領域については知識が不足していることも多いため、コンサルタントの出番があるのです。
  • 「客観的な視点」の提供
    • 社内の人間だけでは気づきにくい問題点や改善点を、外部の目で指摘します。これは、「井の中の蛙」になりがちな企業にとって、とても重要な価値なんです。
  • 「実行力」の提供
    • 計画を立てるだけでなく、実際の変革を推進するためのマンパワーも提供します。例えば、新規事業の立ち上げや、組織改革のプロジェクトを現場で支援することもあります。
  • 「ネットワーク」の提供
    • 様々な業界や企業とのつながりを活かして、ビジネスパートナーの紹介や、先進事例の共有なども行います。

特に重要なのは、これらの価値を総合的に提供できることです。

コンサル業界のビジネスモデル

まず、基本的な収益の仕組みですが、これは「時間を売る商売」だと考えるとわかりやすいです。

例えば、あるプロジェクトで「マネジャー1名とコンサルタント2名が3ヶ月間」働くとします。

この場合、

マネジャー:1名×300万円/月×3ヶ月 = 900万円
コンサルタント:2名×200万円/月×3ヶ月 = 1,200万円
合計:2,100万円

というような計算になるわけですね。

プロジェクトの種類によっても異なります。

戦略コンサルの場合は短期間で少数精鋭チームだから高単価、ITコンサルの場合は数年のプロジェクトでシステム実装を含む大人数の編成…といったように、目指したいアウトプットによって適切な人員・規模も変わってきます。

特に近年は、収益モデルにも変化が出てきています。例えば以下のような形態です。

  • 成功報酬型
    • 例:「コスト削減額の○%」や「売上増加額の○%」を報酬とする
  • サブスクリプション型
    • 例:定額制のアドバイザリー契約
  • デジタルソリューション型
    • 例:コンサルティングとデジタルツールを組み合わせた継続的なサービス提供

このように、コンサルティング業界は「プロフェッショナルの時間」を売ることを基本としながらも、より多様な収益モデルへと進化を続けているのです。

みじん
みじん

ちなみに、利益率の面では、戦略コンサルティングファームは20-30%程度の営業利益率を維持していると言われています。これは、一般の製造業(5-10%程度)と比べるとかなり高い水準ですね。

コンサル業界の分類

コンサルティング業界には各分野に精通した企業群が存在しています。

大きく分けると以下の4つの軸で分類できます。

規模・サービス範囲による分類

分類代表企業
グローバルコンサルティングファームMBB(マッキンゼー、BCG、ベイン)
Big4系(デロイト、PwC、EY、KPMG)の戦略コンサルティング部門
アクセンチュアなどのテクノロジー系大手
準大手コンサルティングファームローランド・ベルガー
A.T.カーニー
オリバーワイマンなど
国内大手コンサルティングファーム野村総合研究所(NRI)
みずほリサーチ&テクノロジーズ
三菱UFJリサーチ&コンサルティングなど
専門特化型・ブティック型ファーム特定業界や機能に特化した中小規模のファーム

専門分野による分類

分類対象分野
戦略コンサルティング• 企業戦略
• 事業戦略
• M&A戦略
• 新規事業開発
オペレーションコンサルティング• SCM(サプライチェーンマネジメント)
• 生産性改善
• 品質管理
• 調達改革
ITコンサルティング• DX戦略
• システム導入
• サイバーセキュリティ
• クラウド移行
組織・人事コンサルティング• 組織設計
• 人事制度設計
• チェンジマネジメント
• リーダーシップ開発

対象業界による分類

分類対象業界
製造業向け• 自動車
• 電機・電子
• 化学
• 素材
金融業向け• 銀行
• 保険
• 証券
• フィンテック
消費財・小売向け• 流通
• 小売
• 消費財メーカー
公共・インフラ向け• 官公庁
• 地方自治体
• 公共インフラ
• 医療・教育

サービス提供形態による分類

分類サービス特徴
戦略立案型• 分析・提言が中心
• 短期プロジェクト中心
実行支援型• 施策の実行まで支援
• 中長期プロジェクト中心
常駐支援型• クライアント先に常駐
• 運用・保守まで含む
プロフェッショナル人材提供型• 専門人材の派遣
• 特定スキル・知見の提供

これらの分類は相互に組み合わさって、各コンサルティングファームの特徴を形作っています。

例えば、

  • マッキンゼーは「グローバル×戦略×業界横断×戦略立案」
  • アクセンチュアは「グローバル×IT×業界横断×実行支援」
  • 業界特化型ブティックファームは「専門特化×特定業界×戦略/オペレーション×戦略立案」

というように、それぞれが独自のポジショニングを確立しているわけです。

コンサル業界の動向と課題

コンサルティング業界の主な動向を見ていきましょう。これらのトピックは、「ピンチでありチャンス」とも言えます。

提供価値の変化

従来のコンサルティングといえば、「戦略を考え、書類を作って終わり」というイメージでしたよね。でも今は大きく変わってきています。

  • 戦略の実行支援
  • 組織の変革支援
  • デジタル技術の実装
  • 人材育成や組織能力の開発

といった「実行」の部分まで価値提供の範囲が広がっています。

「こうすべき」と提案するだけでなく、「一緒にやりましょう」という形に変わってきているのです。

デジタル革命の本格化

よく「DX(デジタルトランスフォーメーション)」という言葉を耳にしますが、実は多くの企業がまだ入り口に立ったばかり。

そのため、以下のようなトピックスは非常に企業からの期待が高まっています。

  • AIの活用方法
  • データ分析の進め方
  • レガシーシステムの刷新
  • デジタル人材の育成

これらの課題に対して、特に、「戦略立案」と「技術実装」の両方ができるコンサルタントの需要が増えているんですね。

サステナビリティ分野の急成長

これは、とても分かりやすい例で説明できます。例えば、複数の企業が「2050年までにカーボンニュートラルを実現する」と宣言していますよね。でも、「具体的にどうやって?」となると、ほとんどの企業が答えを持っていないんです。

  • CO2排出量の計算方法
  • 削減のためのロードマップ作成
  • 再生可能エネルギーへの転換計画
  • サプライチェーン全体での取り組み方

これらの専門知識とノウハウを持つコンサルタントへの需要が、急速に高まっているわけです。

新しい働き方への対応

コロナ禍を経て、働き方が大きく変わりました。でも、これはまだ始まりに過ぎません。

  • ハイブリッドワークの制度設計
  • 成果主義の評価制度への転換
  • 社員のメンタルヘルスケア
  • 新しい組織文化の構築

こうした課題に企業はまさに直面しています。

業界の境界線の曖昧化

上記のような流れも相まって、様々な業界の企業がコンサルティング業界に参入してきています。

  • システム会社がコンサルティング部門を強化
  • 人材会社がコンサルティングサービスを開始
  • 製造業が自社のノウハウをコンサルティングとして展開

など。新しいビジネスチャンスが増えている一方で、競争相手も拡大してきているのです。

みじん
みじん

つまり、これらの課題をいかに解決できるかが、各コンサルティング会社の将来を左右する…そんな時代になってきているわけです。

コンサル業界の職種

コンサル業界の職種にはどのようなものがあるのでしょうか?

企業によって呼称や分け方は様々ですが、ここでは代表的な職種を紹介します。

コンサルタント

いわば「プロジェクトの実働部隊」です。経験年数や役割で分かれています。

職位特徴
パートナー• クライアントの経営層と直接対話
• 大規模プロジェクトの統括
• 新規ビジネスの開拓
マネージャー• プロジェクトの実質的なリーダー
• チームのマネジメント
• クライアントとの日常的な調整
シニアコンサルタント• 分析の中核を担当
• 若手の育成
• 提案書の作成
ジュニアコンサルタント• データ収集・分析
• 資料作成
• クライアントとの打ち合わせ

専門職種

最近特に増えてきている職種です。

職位特徴
データサイエンティスト• ビッグデータの分析
• AIモデルの開発
• 統計解析
UXデザイナー• ユーザー体験の設計
• サービスデザイン
• プロトタイプ作成
テクニカルコンサルタント• システム設計
• IT導入支援
• セキュリティ対策

バックオフィス職種

プロジェクトを支える重要な役割です。

職位特徴
リサーチャー• 市場調査
• 競合分析
• トレンド分析
ナレッジマネージャー• 社内知見の整理・共有
• ベストプラクティスの蓄積
• 研修プログラムの開発
プロジェクトマネジメントオフィス(PMO)• プロジェクト進捗管理
• 品質管理
• リスク管理

面白いのは、これらの職種間の「境界線が曖昧になってきている」ということです。

  • コンサルタントもデータ分析スキルが必要に
  • データサイエンティストもビジネス理解が必要に
  • UXデザイナーも戦略的思考が必要に

といったスキルの複合化が加速しています。

そのため、キャリアパスも多様化しています。

  • 専門性を極める道
    • 例:データサイエンティスト → AIスペシャリスト → 最先端技術の研究開発
  • マネジメントを極める道
    • 例:コンサルタント → プロジェクトマネージャー → パートナー
  • 専門性を掛け合わせる道
    • 例:UXデザイナー → デジタル戦略コンサルタント → イノベーション部門リーダー

このように、コンサル業界の職種は、時代とともに進化を続けているんです。

みじん
みじん

大切なのは、どの職種でも「クライアントに価値を提供する」という共通の目的を持っているということですね。

コンサル業界の特徴

コンサル業界の文化はかなり独特です。業界の内側にいる人にとっては当たり前でも、外から見るとちょっと不思議に映るような文化があります。

「夜型」という生態

夜の10時、11時のミーティングなんて日常茶飯事。「なぜそんな時間に?」って思いますよね。

でも、クライアントとの打ち合わせが夕方まで→その後チームで議論→資料作成は深夜まで…という具合に、否が応でも夜型になっていく。最近は働き方改革で変わってきてはいますが、まだまだ「夜型文化」は健在です。

資料作りへの尋常じゃないこだわり

1枚のスライドに何時間もかける。フォントの大きさ1ポイントにまでこだわる。

業界外の人から見たら「そこまで必要?」って思うかもしれません。

それ、データありますか?

ファクト教とでも言いたくなるくらい、とにかくデータが重要。

暗号のような略語

WIP(Work In Progress)、FYI(For Your Information)、KSF(key success factors)などなど。

独特の略語が飛び交う言語空間で、新入社員が「何を言ってるんだ?」と戸惑うのが最初の通過儀礼です。

「グローバル村社会」の不思議

世界中のオフィスを行き来する人々なのに、妙に狭い社会でもある。

「あの人、シカゴオフィスにいたときの同僚の、ロンドンオフィスの上司の、シンガポールオフィスの後輩です」…世界は広いようで狭い。

階層と年功が逆転する

20代後半のコンサルタントが、大企業の50代の部長に意見するような世界。普通の日本企業では考えられない光景が日常的に起きます。ある意味「実力主義の究極形」かもしれません。

みじん
みじん

こうした独特な文化は、「プロフェッショナル集団」であるがゆえに生まれてきたもの。それが「高品質のアウトプット」を支える土台にもなっているんです。

コンサル業界に向いている人の価値観

コンサル業界で働く人々が大切にしている価値観、求められる考え方を紐解いてみましょう。

「疑う力」と「信じる力」のバランス

クライアントの話を全て鵜呑みにしないけれど、全て疑ってかかるわけでもない。コンサルタントは、ある意味「性善説と性悪説の同時保持者」なんです。

例えば、ある製造業の現場改善プロジェクトで「これまで通りで問題ない」という声に出会ったときには、

  • 「本当にそうかな?」と疑問を持ちつつ
  • でも「そう考える理由があるはず」とも思う

この微妙なバランス感覚が大切なんです。

「理想」と「現実」の往復運動

あるべき姿を描きつつ、現実の制約も理解する。その間を行ったり来たりしながら、最適解を探っていく。

理想だけを追いかければ机上の空論になるし、現実に引きずられすぎれば、ただの現状追認で終わってしまう。 この綱渡りのような思考が求められるんです。

「マクロ」と「ミクロ」の視点切り替え

クライアントの経営層と現場の社員と、同じ日のうちに話をすることも。

時には業界全体を見渡して大きな流れを掴み、かと思えば、特定の業務プロセスを細部まで観察する。この視点の切り替えが、瞬時に求められる業界です。

「教える」と「学ぶ」の循環

コンサルタントは「永遠の先生であり生徒」なんです。クライアントに知見を提供する一方で、現場からは常に新しいことを学んでいます。

この「教えながら学ぶ」という謙虚さがないと、すぐに陳腐化してしまう。時代の変化が激しい今、特にこの姿勢は欠かせません。

みじん
みじん

要するにコンサルタントに求められるのは、この相反するものの両立という、ある種の矛盾を抱えられる力なのかもしれません。
でも、その矛盾を抱えながら前に進むところに、この仕事の醍醐味があるとも言えそうです。

コンサル業界で働く魅力

正直、大変なことも多い仕事ですが、それを補って余りある魅力がたくさんあるんです。

知的能力の総合格闘技

「頭を使う」と一言で言っても、コンサルティングの世界では、その「使い方」が尋常ではありません。

「なぜこの会社は成功しているんだろう?」 「この市場の本質は何だろう?」という謎解きが日常的に繰り広げられる。

知的好奇心を持て余していた人には、まさに「天職」と呼べるかもしれません。

成長スピードは随一

入社1年目で経営課題に触れ、3年目で新規事業の立ち上げに関わり、5年目で大規模な組織改革をリード…

「こんなに早く重要な仕事を任せてもらえるの?」という戸惑いすら感じるほどに、加速度的な成長のチャンスがあります。

「変革の触媒」という役割

企業の大きな転換点に立ち会う。 時には、何万人もの従業員の人生に影響を与えるような決断に関われることもある。

その責任の重さは時に重荷になるけれど、「自分の仕事が世の中を少し変えているんだ」という 実感も味わえる仕事です。

多様なキャリアパスへの選択肢

コンサルでの経験は、その後のキャリアの強力な武器になります。

例えば、事業会社の経営層。スタートアップの創業。投資家として独立。様々な選択肢が開かれています。

まとめ

結局のところ、コンサル業界の人々が大切にしているのは「クライアントの成功に貢献する」ということです。

例えば、ある製造業の会社で、工場の生産性を30%上げる。

これは、単なる数字の改善ではありません。そこで働く人々の給与アップや、より良い労働環境の実現にもつながっていきます。

ハードでプレッシャーが大きい業界ですが、それでも惹かれる人がいるのは、誰か人生を変えるほどのインパクトを持っているからなのでしょうね。

この記事の執筆者
みじん

1992年生まれ。死ぬまでにあらゆる仕事を知りたいと思っている職業マニア。

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