BPO業界とは
そもそもBPOって何?
BPO という言葉を聞いたことがありますか?これは「Business Process Outsourcing(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)」の略で、企業が業務の一部を外部の専門企業に委託することを指します。
実はBPOは、私たちが普段意識しないところで広く使われています。
- コールセンター(カスタマーサポート) → スマホの故障対応や通販の問い合わせ窓口
- 人事・経理業務 → 給与計算、社会保険手続き、採用代行
- ITサポート → システム管理、ヘルプデスク対応
- マーケティング業務 → SNS運用、広告の管理
- 医療事務 → 病院の受付や診療報酬請求
つまり、「企業の中で裏方として支える仕事」をBPOが担っているんです。
BPO業界が提供する価値とは?
では、なぜ企業はBPOを利用するのでしょうか?理由は大きく3つあります。
① コストの最適化
BPO企業は、業務を集約し、効率的な運営をすることで、企業が無駄なコストをかけずに必要な業務を回せる仕組みを提供します。
たとえば、1社だけで運営するよりも、複数の企業のコールセンター業務をまとめて請け負うことで、1件あたりの対応コストを下げられるメリットがあります。
② 業務品質の向上
BPO企業は、特定の業務に特化したプロフェッショナルが集まっているため、企業が自前で対応するよりも、高品質なサービスを提供できることが多いです。
例えば、コールセンター業務では、トレーニングを積んだ専門のオペレーターが対応するため、応対品質が安定しやすくなります。
③ 企業が本業に集中できる
例えば、自動車メーカーはクルマを作ることが本業ですよね。でも、給与計算やITサポートなど、クルマを作ることとは直接関係のない業務も発生します。これらをBPO企業に任せることで、企業は「本当にやるべきこと」に集中できるというわけです。
BPO業界のビジネスモデル
BPO企業がどうやって利益を生み出しているのかを解説していきましょう。BPO業界の収益モデルは、大きく分けると3つのタイプがあります。
業務委託型/企業の業務を代行し、手数料で稼ぐ
BPOの最も一般的なビジネスモデルです。企業が持つ「人事」「経理」「コールセンター」などの業務をBPO企業が代行し、作業量に応じて料金をもらう仕組みです。
たとえば、ある企業がカスタマーサポート業務を外注したいとします。その場合、BPO企業が1件あたり◯円、あるいは月額◯万円という形で請け負います。

収益のポイント:業務量が多いほど売上が増える
企業からの依頼が増えると、その分売上もアップします。ただし、人件費もかかるため、業務を効率化し、利益率を高めることが重要です。
成果報酬型/成果に応じた報酬で稼ぐ
最近増えているのが、この「成果報酬型」のBPOです。これは、BPO企業が企業の業務を代行するだけでなく、成果に応じて報酬をもらうモデルです。
たとえば、営業代行のBPOサービスなら、「契約1件獲得につき◯円」という形で報酬が発生します。
また、マーケティングBPOでは、「広告のクリック数や購入数に応じて◯%の手数料」という仕組みもあります。

収益のポイント:成功すれば大きな利益、失敗するとリスク
このモデルでは、結果を出せば高収益を得られますが、成果が出なければ報酬が少なくなるリスクもあります。そのため、BPO企業は高いスキルやノウハウを持つことが必須になります。
サブスクリプション型/月額固定で継続的に稼ぐ
最近のトレンドは、BPOサービスを「サブスクリプション(定額制)」で提供するモデルです。
たとえば、「月額◯万円で経理業務をすべて代行します」といった形です。
このモデルのメリットは、「BPO企業が安定した収益を得られる」ことです。契約が長期化すれば、BPO企業は継続的な売上が見込めるので、事業が安定しやすくなります。

収益のポイント:長期契約を取れるかがカギ
企業が一度契約すると、簡単には解約しにくいのがこのモデルの強みです。そのため、「長く続く関係を築けるか」がBPO企業の成功を左右します。
BPO業界のビジネスモデルをまとめると、以下のようになります。
ビジネスモデル | 収益の仕組み | 代表的な業務 | 収益のポイント |
---|---|---|---|
業務委託型 | 業務量に応じて料金発生 | コールセンター、経理代行 | 依頼数が増えるほど売上増 |
成果報酬型 | 成果に応じて報酬 | 営業代行、広告運用 | 成果を出せば高収益、リスクあり |
サブスク型 | 月額固定の料金 | ITサポート、人事BPO | 長期契約を取ることが重要 |

BPO企業が利益を伸ばすためには、「大量受注でコストを下げる」「ITを活用して効率化する」「付加価値をつけて価格競争を避ける」といった戦略がカギになります。時代に合わせて進化を続けるビジネスなんですね!
BPO業界の業界分類
BPO業界のビジネスプレイヤーは、「何を強みにしているか」や「どの業務領域を担当しているか」によって分類できます。
サービス領域別の分類
分類 | 主な業務内容 | 代表企業(例) |
---|---|---|
コールセンターBPO | カスタマーサポート、テクニカルサポート、営業代行 | りらいあコミュニケーションズ、ベルシステム24、トランスコスモス |
バックオフィスBPO | 経理、人事、総務、法務、給与計算 | アウトソーシング、パーソルテンプスタッフ、BBSアウトソーシング |
IT・システムBPO | ITサポート、ヘルプデスク、システム運用・保守 | NTTデータ、富士通、アクセンチュア |
マーケティングBPO | デジタルマーケティング運用、広告管理、データ分析 | トランスコスモス、セプテーニ、電通 |
医療・保険BPO | 病院の事務業務、保険請求、医療データ管理 | 日本システム技術(JAST)、EMシステムズ |
物流・サプライチェーンBPO | 在庫管理、物流管理、購買業務の代行 | セイノーロジックス、SGホールディングス |
企業の特性別の分類
分類 | 特徴 | 代表企業(例) |
---|---|---|
大手総合BPO企業 | 幅広い業務領域をカバーし、大規模案件に対応可能 | NTTデータ、トランスコスモス、富士通 |
特化型BPO企業 | 1つの業務に特化し、専門性の高いサービスを提供 | アウトソーシング(人事BPO)、ベルシステム24(コールセンターBPO) |
グローバルBPO企業 | 海外の業務を受託し、多言語対応を強みとする | アクセンチュア、WNSグローバル、インフォシス |
AI・IT活用型BPO企業 | AIやRPAを活用し、業務自動化を推進 | UiPath、Blue Prism、Automation Anywhere |
クライアントの業界別の分類
分類 | 主なクライアント業界 | 代表企業(例) |
---|---|---|
金融・保険向けBPO | 銀行、証券、保険会社の業務代行 | NTTデータ、TIS、SBIビジネスサポート |
製造業向けBPO | 資材調達、受発注管理、品質管理サポート | 富士通、日立、パナソニック システムソリューションズ |
小売・EC向けBPO | ECサイト運営、コールセンター、物流管理 | 楽天BPO、アマゾンBPO、トランスコスモス |
ヘルスケア向けBPO | 病院、製薬企業、医療保険機関の事務業務 | 日本システム技術(JAST)、エムスリー |
公共機関向けBPO | 官公庁、自治体の事務作業代行 | NTTデータ、日本電気(NEC)、日立システムズ |
BPO業界には様々なタイプのプレイヤーが存在し、それぞれが異なる強みを活かして市場を開拓しているんですね!
BPO業界の主要企業10社
日本国内のBPO業界の主要な企業とその特徴をまとめました。
トランスコスモス株式会社
- デジタルマーケティングやコールセンター、バックオフィス業務など、幅広いサービスを提供
- 中央省庁や地方自治体の大規模案件での豊富な実績

株式会社ベルシステム24ホールディングス
- コールセンター業務を中心に、営業代行やカスタマーサポートなどのサービスを展開
- 営業活動のサポートに強みを持ち、営業モデルの確立や売上向上支援が主力

株式会社パソナグループ
- 人材派遣や人事・総務業務のアウトソーシングに強みを持つ
- 人材派遣業の草分けで人材紹介や再就職支援も手掛ける
アルティウスリンク株式会社
- 2023年に旧KDDIエボルバとりらいあコミュニケーションズが統合
- バックオフィス業務のBPOを得意とする

パーソルホールディングス
- 人材業界2位でバックオフィス支援や採用代行サービスを展開
- ITエンジニア派遣やアウトソーシング事業が成長

TOPPANホールディングス株式会社
- 書類チェックシステムやコンタクトセンター、DMアウトソーシングなどを多岐に展開
- 自治体や中央省庁の補助金事務局やキャンペーン事務局などが特徴

SCSKサービスウェア株式会社
- コールセンターやヘルプデスク、バックオフィス業務を中心にBPO提供
- IT分野での高い技術力と豊富な実績が強み

株式会社キャスター
- 秘書・人事・経理・データ入力などのオンラインアシスタントサービスを提供
- 2014年創業の比較的新しい企業

株式会社うるる
- 電話受付の対応サービスのfondesk(フォンデスク)を提供
- データ入力代行や文書の電子化を行うBPO事業を開拓

NTT ExCパートナー
- NTTグループのBPOサービス企業で人事・総務領域の業務代行が主力
- 幅広い対象に向けた研修・eラーニングサービスでの業務効率化も支援
BPO業界の将来性
BPO業界は技術革新や社会の変化に伴い、日々進化しています。BPO業界の最新トレンドとして、以下のポイントが挙げられます。
AIと機械学習の活用
近年、AI(人工知能)や機械学習の技術が飛躍的に進歩しています。これらの技術をBPOに導入することで、業務の自動化や効率化が可能となり、人的ミスの削減や迅速な対応が実現します。例えば、コールセンター業務では、AIを活用したチャットボットが顧客対応を行い、オペレーターの負担を軽減しています。
BPaaS(Business Process as a Service)の台頭
BPaaSとは、クラウド上で業務プロセスをサービスとして提供するモデルです。これにより、企業は自社でシステムを構築することなく、必要な業務プロセスを迅速に導入できます。特に、中小企業にとってはコスト面でのメリットが大きく、今後さらに普及が進むと考えられます。
プロセス自動化の進展
RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)などの技術により、定型的な業務の自動化が進んでいます。これにより、業務の効率化だけでなく、従業員はより創造的な業務に集中できるようになります。また、プロセス自動化はコスト削減にも寄与し、企業の競争力強化につながります。
データセキュリティの強化
デジタル化が進む中で、データセキュリティの重要性が増しています。BPO業界では、顧客情報や業務データを扱うため、セキュリティ対策の強化が求められています。最新のセキュリティ技術の導入や従業員の教育を通じて、信頼性の高いサービス提供が重要となります。
カスタマーエクスペリエンスの向上
消費者意識の高まりにより、顧客体験の質が企業の競争力を左右する時代となっています。BPO業界では、パーソナライズされたサービスや迅速な対応を通じて、顧客満足度の向上を目指しています。これにより、企業のブランド価値が高まり、顧客のロイヤルティも向上します。
BPO業界の課題
続いて、BPO業界が抱える共通課題についても見ていきましょう。
低コスト競争の激化
BPOの大きなメリットはコスト削減ですが、企業同士の価格競争が激しくなると、利益率が下がるという問題が生じます。特に、インドやフィリピンといった海外のBPO企業は低コストかつ高品質なサービスを提供できるため、日本企業は競争に苦しんでいます。
こうした中で、日本のBPO企業は単なるコスト削減だけではなく、付加価値を提供できるかどうかが重要になっています。
セキュリティリスクの増大
BPO企業は企業の機密情報や個人情報を取り扱うことが多いため、情報漏洩のリスクが常につきまといます。特に、リモートワークの普及により、セキュリティ対策がより重要になっています。
もし情報漏洩が発生すると、企業の信頼は大きく損なわれ、契約解除や訴訟に発展することもあります。そのため、BPO企業は厳格な情報管理体制を構築することが責務となっています。
人材不足と労働環境の問題
BPO業界では、大量のオペレーターや専門スタッフが必要になります。ところが、日本では少子高齢化が進み、働き手が減少しています。その結果、人材確保が困難になっているのです。
また、BPO業務の多くはルーチンワークが中心であり、給与水準も比較的低め。そのため、離職率が高いという問題もあります。企業は、働きやすい環境を整えることが求められています。

BPO業界が今後も成長を続けるためには、単なる「業務代行」ではなく、「価値の創出」がカギになりそうですね!
BPO業界の主な職種と仕事内容
BPO業界にはどんな職種があり、それぞれどんな仕事をしているのかを見ていきましょう。
コールセンター系
BPO業界の中でも、最もイメージしやすい職種がコールセンターの仕事かもしれません。
企業から委託を受け、顧客からの問い合わせ対応を行います。
- カスタマーサポート → 商品の使い方や注文・返品の受付など、一般的な問い合わせ対応。
- テクニカルサポート → IT機器やソフトウェアの不具合対応、技術的な問い合わせを処理。

最近では、AIチャットボットやFAQシステムの活用が進んでおり、オペレーターはより複雑な対応に集中できるようになっています。
事務・バックオフィス系
企業のバックオフィス業務を代行する仕事です。
- 経理業務 → 請求書の処理、給与計算、仕訳入力など
- 人事業務 → 採用活動のサポート、入退社手続き、勤怠管理など
- 総務業務 → 資料作成、郵便・宅配の仕分け、備品管理など

これらの仕事はRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)による自動化が進んでいますが、まだまだ人の手が必要な分野です。
営業・マーケティング支援系
「営業」と聞くと、外回りのイメージがあるかもしれませんが、最近はBPOで営業支援を行うケースが増えています。
- インサイドセールス → 電話やメールを使って見込み顧客にアプローチし、商談の機会をつくる仕事。
- 営業アシスタント → 商談後のフォローや契約書の作成、顧客データの管理など。

デジタルマーケティングを活用して、企業の広告運用やSNS管理を代行する業務も増えています。
IT・デジタル系
BPO業界では、業務の自動化が進んでいます。そのため、IT関連の職種も増えています。
- RPAエンジニア → 企業の単純作業を自動化するためのロボット(ソフトウェア)を開発・運用する仕事。
- AI導入コンサルタント → AIチャットボットやデータ分析ツールを企業に提案し、業務効率化をサポート。

IT技術を活用して「単なる業務代行ではなく、効率化まで支援する」サービスを提供するところも増えてきています。
プロジェクト管理・マネジメント系
BPO業務は、クライアントごとに異なる業務フローがあるため、それをスムーズに回すマネジメントが必要です。
- BPOプロジェクトマネージャー → クライアント企業と調整し、BPOの業務設計や運用管理を行う仕事。
- 品質管理(QA)担当 → BPO業務の品質を保つために、業務フローの改善やスタッフの教育を担当。

BPO業務が効率的かつ高品質で提供されるようにするための重要な役割を担っています。
BPO業界の特徴
BPO業界の特有の文化について、4つの特徴を挙げてみました。
迅速かつ正確な即応文化
この業界は時間に対する意識が非常に高いんです。顧客からの問い合わせには迅速かつ正確に対応することが求められます。また、「時間が命」の場面も多いので、ちょっとしたミスが大きなトラブルに繋がることも。ですから、BPO業界で働く人たちは、「素早く、正確に」行動することを常に意識しています。
目立たないけれど大切な裏方
BPO業界は、外から見ると目立たない仕事が多いように思えるかもしれません。でも、電話対応や事務処理など、背後でしっかりと支える業務が実は企業運営の心臓部とも言える部分。仕事の成果がすぐに目に見えないことも多いけれど、一つ一つの業務が積み重なって、全体を支えているということを、しっかりと意識しているんです。
チームワークを大切にする「助け合い文化」
BPOの仕事は、どうしても一人で全てを完結するのが難しい場面が多いんです。だから、BPO業界の人たちは、自然と「助け合い文化」が根付いています。「困っている人を助ける」「お互いの得意分野を活かしてチームとして成長する」この文化が、とても大切にされています。
顧客中心のカスタマーオリエンテッド文化
BPO業界では「顧客満足」を最優先に考えます。だからこそ、単に「頼まれたことをやる」という姿勢ではなく、相手のニーズを深く理解し、寄り添って解決策を提案するという心遣いが違いを生みます。
BPO業界の就職・転職に向いている人
この業界には、さまざまな職種があるので、求められるスキルや能力も多様ですが、共通して大切にされている考え方がいくつかあります。5つのポイントでご紹介します。
柔軟であること
この業界では、クライアントのニーズが常に変化しています。あるときは新しいシステムの導入をサポートしなければならないし、別のときには急なトラブル対応をしなければならないこともあります。そんなときに大事なのが、「柔軟な思考」です。
「これが決まりきった方法だ」と思わず、状況に応じて最適な対応を考えられる人が重宝されます。
小さなことにも気を配る
BPO業界では、「些細なことに気を配る」という姿勢が本当に重要です。たとえば、クライアントからの問い合わせに対して、「ただ返答する」だけでなく、相手が求めている本質をしっかりと汲み取って、最善を尽くすことが求められます。
人から「よく気がつくね、気が利くね」と言われる人がBPO業界で活躍しやすいかもしれません。
学び続ける姿勢
技術が進化し、業務内容が常に変化する業界なので**、「現状維持ではなく、常に学び続ける」**姿勢が求められます。新しいツールやソフトウェアを使いこなす能力はもちろん、自分が成長していくことを楽しめる心構えが必要です。
新しいことを学ぶのが楽しい!と感じる人には、この業界がぴったりだと思います。
トラブルを恐れない
BPO業界では、時たまトラブルが発生することがあります。システムの不具合や、クライアントからのクレームなども避けられません。
トラブルが起きたときに大事なのは、慌てずに解決策を考え、しっかりと対応することです。問題に直面しても、すぐに落ち着いて対応できる人は、この業界に向いていると言えます。
細かく計画を立てる
業務の中には期限が厳守されるものが多く、計画的に動くことが重要です。急な依頼に対しても、どう対処すれば効率的に進められるかを考え、しっかりと準備しておくことが求められます。計画を立て、優先順位をつけて動くことが得意な人は、この業界に向いています。

BPO業界の人たちが大事にしているのは、結局のところ「繋がり」や「信頼」なのかもしれません。なぜなら、BPO業界はただの「業務を外注する」だけではなく、企業の目標を実現するためのパートナーだからです。
まとめ
働くとは「傍(はた)を楽(らく)にする」ことだ、とよく言われますが、BPO業界はそれをど真ん中で実行している仕事。
業務を通じて顧客に時間と余裕を提供できることが、BPO業界の存在意義であり、一番の魅力でもあります。
裏側から企業を支える業界の魅力を、お分かりいただけたでしょうか。