リース業界とは
まず、リースとは何か。簡単に言えば『物を借りる』ということです。でも、レンタルとは少し違います。
たとえば、あるお菓子メーカーが新しい工場を建てることになったとします。それにはたくさんの製造機械が必要です。1台何千万円もする機械を、一度に何台も購入するとなると、とても大きな経済負担になりますよね。
ここで登場するのが、リース会社です。リース会社が機械を購入して、お菓子メーカーに貸し出すんです。お菓子メーカーは毎月一定額のリース料を支払うことで、その機械を使うことができます。
なぜこのビジネスが必要なのか。リース業界が提供している価値は、大きく4つあります。
資金効率の改善
- 初期投資を抑えられる
- 毎月定額の支払いで計画が立てやすい
- 節税効果も得られる
業務効率の向上
- 設備管理の手間が省ける
- 専門的なメンテナンスサービスが受けられる
- 会計処理が簡単
リスクの軽減
- 技術革新に柔軟に対応できる
- 設備の陳腐化リスクを避けられる
- 廃棄処分の負担がない
経営の近代化
- 最新設備の導入が容易
- 環境対応や省エネ化が進めやすい
- 本業への経営資源の集中
このように、リース業界は『モノを所有する』から『モノを必要な時に必要なだけ使う』という価値を提供することで、企業の経済活動をサポートしている重要な産業なんです。

実は皆さんの身近なところでも、リースは使われています。たとえば、コンビニのレジや、オフィスのコピー機、建設現場の重機なども、多くがリース契約で導入されているんです。
リース業界の業界分類
リース業界は多様な顧客の異なるニーズに、柔軟に対応できる仕組みを作り上げてきた業界です。
リース業界の大きく4つの軸で分類し、それぞれの特徴を説明しましょう。
資本系統による分類
銀行系リース会社 | メーカー系リース会社 | 商社系リース会社 | 独立系リース会社 | |
---|---|---|---|---|
特徴 | 安定した資金調達力、親銀行の顧客基盤活用 | 親会社製品の販売支援機能 | 商社のネットワーク活用 | 機動的な意思決定 |
強み | 大型案件、低金利での与信 | 専門的な商品知識、メンテナンス体制 | 国際取引、多様な物件取扱 | 柔軟な商品設計、特定分野への特化 |
企業例 | みずほリース、三菱HCキャピタルなど | リコーリース、NECキャピタルなど | 東京センチュリー、芙蓉総合リースなど | オリックス、中道リースなど |
リース会社は、市場環境の変化に応じて、それぞれの企業が得意分野を活かしながら、独自のポジショニングを確立しているのが現状です。
リース業界のビジネスモデル
まず、リース業界の基本的な収益の仕組みを見てみましょう。
たとえば、1000万円の建設機械をリースする場合を考えてみます。
リース会社は、まず1000万円で機械を購入します。これを5年間のリース契約で、毎月22万円でお客様に貸し出すとします。 5年間で集まるリース料は:22万円 × 60ヶ月 = 1320万円
差し引き320万円が、リース会社の粗利となります。
でも、これだけじゃありません。リース会社の収益源は、大きく4つあります。
金利収益
リース料の中には、お客様が分割払いすることへの金利が含まれています。リース会社は、銀行から低い金利でお金を借りて、それを適正な金利で貸し出すことで、その差額が収益となります。
物件価値差益
中古市場で需要のある建設機械や工作機械は、リース期間が終わった後も売却できます。当初の見込みより高く売れれば、それも収益になります。
サービス収益
保守メンテナンス、資産管理、保険の取次などの各種サービスを提供することで、追加の収益を得ています。最近は、このサービス収益の重要性が増しています。
スケールメリット
たとえば、同じ複合機を100台まとめて購入すれば、1台あたりの仕入れ価格は大幅に下がります。この仕入れコストの削減も、重要な収益源になっています。
実は、単純な物件の貸し出しだけでは、競争が激しくて利益が出にくくなっているのが現状です。そこで近年は、
- 環境配慮型機器のリース
- IT機器の導入支援
- 設備の稼働状況の可視化サービス
新しい収益モデルも生まれています。

リース業界のビジネスモデルは、単純な「物を貸して利ざやを稼ぐ」から、「総合的な企業向けソリューションを提供する」方向に進化しているんです。
主な提供サービス
リース業界が提供するサービスについて、具体的な例を交えながら説明していきましょう。
先ほど挙げたように、リース会社は単に『モノを貸す』だけではないんです。
ファイナンス・リース
最も基本的なサービスです。最終的には資産の所有権がリース会社から借り手に移ることを前提としているのが一般的で、資産を長期間使用する予定がある場合に適しています。
たとえば、あるパン屋さんが新しいオーブンを導入したいと考えたとします。高性能なオーブンは3,000万円。一括で購入するのは資金的に難しい。そんな時に活用されるのが、ファイナンス・リース。5年間のリースで契約すると、毎月60万円の支払い(60万円×60ヶ月=3,600万円)でオーブンを導入できるようになります。
オペレーティング・リース
リース期間が終わったら返却できる形態のサービスです。ITシステムのように、陳腐化が早い設備に人気があります。最近は、環境に配慮した建物の導入にも使われています。
メンテナンス・リース
建設機械や複合機などで人気のサービスです。故障したら24時間以内に修理に駆けつける。消耗品の補充も全部おまかせ。月々定額で、機械の調子を万全に保てるのがメリットです。
サブスクリプション型サービス
最近注目されているのが、このサブスクリプションサービスです。たとえば、社用車を必要な時に必要な台数だけ利用できる。車検や保険、メンテナンス、事故対応まで全部込み。使った分だけ支払う形の新しいサービスです。
資産管理サービス
大企業向けに人気なのが、これ。全国にある数千台のパソコンや複合機の管理を一括でリース会社が引き受けます。保守記録、移設、廃棄、セキュリティ管理まで、すべておまかせできるメリットがあります。
環境ソリューション
太陽光パネルやLED照明など、環境配慮型設備の導入を支援するサービスです。補助金申請のサポートから、売電収入の試算なども請け負います。最近は、カーボンニュートラルに向けた提案も増えています。
グローバルサービス
海外進出する企業向けのサービスです。現地の法規制対応から、為替リスクのヘッジまで。世界中どこでも同じ品質のサービスを提供できる体制を整えています。

リース業界の各社は、これらのサービスを組み合わせて提供しています。そしてサービスの組み合わせ方が、各リース会社の強みの違いにもなっているんです。お客様のニーズに合わせて、最適なサービスを提案できる力が重要な競争力になっているんですね。
リース業界の大手企業一覧
日本のリース業界の主要な企業について、それぞれの特徴とともに紹介します。
オリックス
- 独立系の総合リースで国内首位
- リースを起点に多角的に事業を展開
- 不動産、環境エネルギー、投資銀行業務など幅広い

三菱HCキャピタル
- 三菱UFJフィナンシャルグループ系
- グローバルネットワークが強み
- 航空機リース、不動産、環境・エネルギー事業に注力
三井住友ファイナンス&リース
- 業界大手の一角
- 航空機リース事業では世界有数
- 三井住友銀行と住友商事の顧客基盤とネットワークを活用

東京センチュリー
- みずほ系総合リースの大手、現在は伊藤忠商事が筆頭株主。
- デジタル機器や環境関連設備に注力
- リースのほかに環境ビジネスや不動産事業も展開

芙蓉総合リース
- 日本のリース黎明期である1969年設立
- 不動産や環境エネルギー、航空機、医療福祉に注力
みずほリース
- みずほフィナンシャルグループ系
- 2019年に興銀リースからみずほリースへ社名変更
- 鉄道車両、船舶などの独自領域を持つ
JA三井リース
- 農林中金と三井物産グループの総合リース
- 不動産,インフラ,再エネ,船舶,半導体,流通,ICT分野に強み

リース業界の将来性
リース業界の動向は、企業の経営効率化、環境負荷低減、デジタル化の推進など、今の企業が抱える課題と密接に結びついています。
リース業界の最新トレンドについて、5つのポイントを取り上げましょう。
サブスクリプション型ビジネスへの進化
従来のリースは、単に設備を貸し出すだけ。でも今は違います。たとえば、ある建設会社では重機を「必要な時に、必要なだけ」利用できるサービスを始めました。IoTで稼働状況を管理し、メンテナンスのタイミングも自動で把握。使用量に応じた課金で、顧客の経営効率化に貢献しているんです。
脱炭素化・SDGsへの対応
あるリース会社では、太陽光パネルや蓄電池、EV車両などの環境配慮型設備のリースパッケージを提供しています。面白いのは、CO2削減量を可視化し、環境経営の実現をサポートしていること。企業のSDGs対応を、設備面から支援する新しいビジネスが生まれているんです。
DX(デジタルトランスフォーメーション)支援
中小企業のデジタル化を支援するサービスが注目されています。たとえば、工作機械のリースと同時に、IoTセンサーの設置、データ分析、予防保全まで一括で提供。リース会社が、企業のDX推進パートナーとしての役割を担い始めているんです。
グローバル展開の加速
日本企業の海外進出を支援するため、アジアを中心にネットワークを拡大。現地での設備導入から、メンテナンス、管理まで一貫してサポート。特に、環境規制の厳しい欧州での環境配慮型設備の導入支援が伸びているんです。
新しい領域への挑戦
最近では、ソフトウェアライセンスのリース、スマートシティ向けインフラ設備のリース、さらにはデータセンターまるごとのリースなど。従来は想定していなかった分野にも、リースの考え方が広がっています。
このように、リース業界は時代の変化とともに進化を続け、新たな価値を生み出し続けているんです。
リース業界の課題
一方で、リース業界が現在直面している課題についても、順番に見ていきましょう。
収益性の低下
かつては、物件を貸して金利差を稼ぐビジネスモデルで十分な収益が上げられました。でも今は違います。超低金利の継続で利ざやが縮小。リース会社同士の価格競争も激しくなっています。
昔は3%の利ざやが取れていたのに、今は1%を切るケースも…。単純な物件リースだけでは、経営が立ち行かなくなってきているんです。
業界構造の変化
従来型のリースビジネスが通用しなくなってきている中、新たなビジネスモデルの構築が求められています。サブスクリプションやシェアリングなど、新しいビジネスモデルへの転換が必要。でも、既存の組織体制や業務プロセスの改革には莫大なコストがかかります。
人材確保・育成の課題
リース業界の仕事は、実は非常に専門性が高いんです。例えば、建設機械のリースなら、機械の知識、金融の知識、さらに業界の専門知識まで必要なため、専門性の高い人材の確保が難しいのです。

このように、リース業界は様々な課題に直面していますが、それは同時に新たな成長のチャンスでもあるんです。の課題を乗り越えられるかどうかが、各社の将来を左右すると言っても過言ではないでしょう。
リース業界の職種
リース業界にはどんな職種の人が働いているのでしょうか。代表的な職種を5つのカテゴリーに分けて説明します。
営業部門
クライアントとなる企業や法人を担当し、総合的な提案を行います。リース会社の「顔」となる部門です。
- 主な業務
- 新規開拓営業
- 既存顧客フォロー
- 提案書作成
- 見積作成
- 条件交渉
審査部門
リース会社の「番人」とも言える存在です。取引先の決算書を丹念に読み込み、取引先の信用力調査を行います。
- 主な業務
- 取引先の信用調査
- 業界動向分析
- リスク評価
- 与信枠設定
- 契約審査
物件管理部門
会社が保有する資産(物件)を管理する役割です。医療機器のメンテナンス計画の作成から、建設機械の修理対応、IT機器の入れ替え管理まで、業務範囲は多岐にわたります。
- 主な業務
- 保守管理計画の立案
- メンテナンス手配
- 物件の現地調査
- 保険関連対応
- 物件の評価・処分
管理部門
管理部門では、大量の契約書や請求書を処理します。リース取引では会計・税務の専門知識が必要なため、管理部門は強力な縁の下の力持ちなんです。
- 主な業務
- 契約書作成・管理
- 会計処理
- 支払・回収管理
- コンプライアンス対応
- 情報システム管理
経営企画部門
新しいビジネスモデルを検討したり、デジタル化への対応などを進める部門です。リース会社の「未来を創る」部門と言えます。
- 主な業務
- 新商品開発
- 事業戦略立案
- 市場調査
- アライアンス検討
- 経営計画策定

これらの職種は、会社の規模や特徴によって求められる能力も少しずつ異なります。でも、共通して言えるのは、「金融」と「モノ」の両方の知識が必要な、専門性の高い仕事だということです。
この業界に求められるスキル
リース業界で必要なスキルについて、体系的に解説していきたいと思います。この業界の重要スキルは『財務+モノ+人』の3つが交わるところにあります。
重要スキル
スキル分類 | 詳細 |
---|---|
財務・会計の知識 | リース会計の基礎知識 財務諸表の読解力 キャッシュフローの分析力 |
業界・商品知識 | • リースの対象となる物件の知識 • それぞれの業界動向 |
コミュニケーション力 | • 顧客との折衝能力 • 社内の調整能力 • プレゼンテーション力 |
あるとより良いスキル
スキル分類 | 詳細 |
---|---|
法務知識 | • 契約書の理解 • 各種規制の把握 • リスク管理 |
ITリテラシー | • デジタルツールの活用 • データ分析力 • システム理解 |
英語力 | • 海外取引対応 • グローバル展開 |
リース業界に向いている人の特徴
リース業界に向いている人の考え方について、具体的なエピソードを交えながらご紹介していきましょう。
好奇心のスケールが大きい
「今日は機械の調子はどうですか?」「あの設備の稼働率はいかがでしょう?」 単なる貸し手ではなく、事業のパートナーとして、時には作業着に着替えて、機械の状態を一緒に確認する。そんな「現場主義」の文化が根付いています。だからこそ、人やモノへの純粋な興味。それが、この業界では大切なんです。

うちの支店長は、取引先の工場に行くと、必ず機械の細部まで見に行くんです。素人目にはどれも同じに見える機械なのに、メーカーの違いや、改良点まで把握している。その姿勢に、尊敬を覚えます。
長期的な視点を持てる
リースって、一度の取引で終わりじゃないんです。その会社が大きくなっていく過程に、ずっと寄り添っていく。だから、目先の利益よりもその会社の未来を一緒に考えることが大切なんです。そのため、今は苦しくても将来性のある会社かどうか、お客様の10年後を想像できる人が向いています。
バランス感覚のある人
「数字も大事、でも現場も大事」「理論も必要、でも経験も必要」「新しいことも取り入れたい、でも基本は守りたい」
数字だけを見るのは簡単です。でも、その先にある可能性も見る。そんな相反することの間でバランスを取れる人がこの業界では重宝されます。
お客様の成長に寄り添える人
結局、この仕事は人と人なんです。お客様の話に耳を傾け、その想いを理解する。それを形にする方法を、一緒に考えていく。そんな対話を楽しめる人が、長く続けられるかもしれません。
リース業界で働く魅力
リース業界で働く魅力について、実際に働く人たちの声を交えながらお話ししていきましょう。
お客様の『できない』を『できる』に変える
最初は小さな工場だった取引先が、少しずつ設備を増やして、今では立派な企業に。その成長過程に携われるのは、なんとも言えない喜びです。

工場に新しい設備が入る時の、現場の方々の表情が忘れられない。『これで生産性が上がる』『新しい製品が作れる』。そんな期待に満ちた声を聞くと、この仕事をしていて良かったと思います。
多様な業界を知れる面白さ
建設、医療、IT、環境…。様々な業界の最前線を見られる。それぞれの業界の課題や可能性を知ることで、自分の視野も広がっていく。それがこの仕事の大きな魅力です。

最初は機械のことなんて全然分からなかった。でも、メーカーさんと話をしたり、現場で学んだり。気がつけば、専門的なアドバイスができるようになっていました。
金融とものづくりの接点
紙幣で貸し借りするのとは違い、実際のモノがあって、それを動かす人がいる。金融の仕組みが、現実の価値を生み出していく。その過程を肌で感じられるのは、リース業界ならではかもしれません。

正直、最初は地味な仕事だと思っていました。でも違った。お客様の未来に投資する。それが私たちの仕事の誇りです。
まとめ
リース業界は金融の力で、現実の価値を創造することで様々な顧客の経営課題を解決しているんですね。
お客様の成長とともに、自分も成長できる。そんな奥深い業界の魅力をお分かりいただけたでしょうか。