クリーニング業界とは
人々の清潔で快適な生活を支援する
衣類や寝具などの適切なケアと衛生管理を通じて、衣類の長寿命化と価値維持を実現するのがクリーニング業の存在意義です。
4つの顧客層に価値を提供している
クリーニング業は、タイムパフォーマンスがますます重要となる現代社会で、衣類管理の負担を軽減する重要な役割を果たしています。具体的に誰の課題に応えているのか、大きく4つに分かれます。
- 働く世代
- 特に共働き世帯や単身社会人。時間がない、でも清潔な身なりは必要。この相反する課題を解決しています。
- 高級衣類の所有者
- ブランド品やスーツなど、高額な衣類を長く美しく保ちたい。でも自宅での手入れは難しい。この課題に専門技術で応えています。
- 高齢者
- 大きな布団や重い衣類の洗濯が体力的に困難。これを宅配サービスで解決しています。
- ホテル・飲食店などの事業者
- ユニフォームの大量クリーニングが必要だが、自社での管理は非効率。この課題を一括管理で解決しています。
つまり、クリーニング業は、現代社会の多様なニーズに応える「生活インフラ」としての価値を提供しているんです。
クリーニング業界のビジネスモデル
クリーニングのビジネスには基本的な収益の柱が4つあります。
個人向けクリーニング
例えば、ワイシャツ1枚200円、スーツ上下で1,000円といった具合に、1点ごとの料金設定で収益を上げています。つまり、処理枚数×単価がベースになるわけですね。
- 店舗クリーニング
- 街中や住宅地に実店舗を構え、対面でサービスを提供
- 集配クリーニング
- 定期的に顧客宅を巡回し、衣類の集荷と配達を行う
- 宅配クリーニング
- インターネットや専用アプリで受注し、宅配便を利用した集配を行う
法人向けクリーニング
ホテルのリネン類や飲食店のユニフォームなど、大口の契約です。個人向けより単価は低いものの、安定的な収益が見込めます。月間契約や年間契約で、定期的な売上を確保できる仕組みです。
- ホテル、レストラン、旅館のリネン類
- 飲食店やデパート、テーマパークのユニフォーム
- 病院の白衣
- 工場のワーキングウェア
- ドレスなどレンタル衣類
リネンサプライ
レンタル(貸す)、クリーニング(洗う)、デリバリー(届ける)全てをサービス提供者が担うビジネスモデルです。それによって、顧客となる法人は備品の購入・在庫管理の手間がなくなるメリットがあります。
ユニフォームレンタル
リネンサプライの考え方を制服に応用したサービスで、ユニフォームを顧客にレンタルし、定期的にクリーニング・集配を行うサービスです。
付加サービス
最近ではクリーニング保管、染み抜き、サイズ直しなど。これらの追加料金が新たな収益源になっています。
- しみ抜き専門サービス
- 靴クリーニング
- バッグのメンテナンス
- 着物の保管サービス
実は、この業界の利益率はそれほど高くないんです。それは「規模の経済」が働きにくいからです。例えば、高級スーツ1着をクリーニングする時、10着まとめて処理しても1着あたりのコストはあまり下がりません。むしろ、丁寧な仕上げが必要なため、手間がかかります。そこで最近では、サブスクリプションサービスや保管付きクリーニングパックなど、新しい収益モデルも出てきています。
クリーニング業界の主要プレイヤーと代表的な企業
クリーニング業界は地域性が強く、全国展開を行う大手企業の数は多くありません。各社が得意分野を持ち棲み分けています。
白洋舎
1906年創業で、東証プライム上場企業の業界最大手。
百貨店を中心とした高級衣類のクリーニングに強みがあり、全国チェーン展開と技術研究所を持っています。ホテルリネンサプライ事業も展開しています。
企業サイト:

日本さわやかグループ
「ホワイト急便」のブランドをフランチャイズ展開しています。店舗網は日本最多で、 国内に4,500を超える店舗があります。
企業サイト:
きょくとう
福岡県に本社を置き、全国各地でクリーニング「ペリカン倶楽部」「青い鳥」「コインズ」の店舗運営を手掛ける企業です。業務用は扱わず、家庭向けのクリーニング事業専業で行っています。
企業サイト:

ホワイトプラス
Webやアプリで注文ができる衣類の宅配クリーニングサービス「Lenet(リネット)」の提供を行っています。宅配クリーニングの先駆けで、ネット完結型のビジネスモデルを確立しました。若い世代を中心に支持を集めています。
企業サイト:

ユーゴー
北関東を中心に約250店舗のクリーニング店・コインランドリー店を展開する企業です。キャッチフレーズに「クリーニング界のファミリーレストラン」を掲げており、小規模工場を核に4〜5店のコンパクトな店舗を配置するパッケージプラント方式を導入しています。
企業サイト:

新日本ウエックス
法人向けリネンサプライ・ユニフォームレンタルの大手で、特にホテル分野でトップシェアを誇っています。
企業サイト:
興味深いのが、クリーニング業界の市場シェアの構造です。実は、業界全体の約7割は、個人商店や小規模チェーン店が占めているんです。。大手上場企業でも、シェアは数パーセントにとどまる。つまり、非常に分散化された市場なんですね。
クリーニング業界の将来性と課題
家計の節約志向や、ファストファッションの流行によって一般消費者向けのクリーニング市場は縮小傾向にあります。
一方で、訪日客増の恩恵を受けるホテル向けリネンサプライや食品衛生法改正を背景にしたユニフォームレンタルが成長を牽引している傾向にあります。
クリーニング業界の新しいトピックス
伝統的なクリーニング業界も、時代とともに進化を続けています。特に現在顕著な動向を紹介します。
- デジタルフォーメーション
- 従来のアナログな顧客管理やキャッシュレス対応などの課題を抱えている企業がいる一方で、専用スマホアプリでの予約管理やAIで衣類識別できるシステム、リネン仕分け作業の自動化など、DX化を進めている企業が業績を伸ばしています。
- サブスクリプション型サービス
- 共働き世帯の増加、働き方改革、ライフスタイルの変化に合わせて、定額制でクリーニングを利用できる形態のサービスが人気を博しています。
- 環境規制への対応
- クリーニング工場では1日に約500着を処理する工場で、およそ20トンの水を使用します。また、ドライクリーニングに用いられる溶剤の環境への影響が問題視され、規制が強まっています。こういった背景もあり、環境に配慮したサービスフローへの転換が進められています。
新しいトレンドは、「伝統的な技術」があってこそ成り立つもの。つまり、職人技とデジタル技術の融合が、この業界の将来を左右するカギとなりそうですね。
クリーニング業界の職種と働き方
クリーニング業界で活躍する様々な職種について、詳しく見ていきましょう。
技術部門
クリーニング業の根幹を担う部門です。技術者は「匠」と呼ばれるほど、高度な技術を持っているんです。
職種名 | 解説 |
---|---|
クリーニング技能士 | 国家資格を持つプロフェッショナル。 |
シミ抜き職人 | 特殊なシミを化学的知識で除去する専門家。 |
プレス工 | アイロンがけのスペシャリスト。 |
店舗運営部門
クリーニング業の「顔」となる部門です。お客様とのコミュニケーションのなかで衣類の状態チェックを的確に行い、顧客満足を担う重要な役割を担っています。
職種名 | 解説 |
---|---|
店舗責任者 | 品質管理からスタッフ教育まで担当。 |
受付スタッフ | 衣類の状態チェックや料金説明が主な仕事。 |
仕上げスタッフ | 最終チェックと包装を担当する縁の下の力持ち。 |
工場管理部門
クリーニング業では、1つの大規模工場に商品を集めて処理する「集中工場方式」が主流となっています。工場での工場全体のパフォーマンスを高める役割です。
職種名 | 解説 |
---|---|
工場長 | 全工程の管理責任者。 |
機械オペレーター | 最新の洗浄機器を操作。 |
品質管理者 | 全ての工程で品質をチェック。 |
配送部門
クリーニング店と工場間でクリーニング品を集配する部門です。
職種名 | 解説 |
---|---|
配送ドライバー | 単なる配送だけでなく、お客様との重要な接点になっています。 |
ルート管理者 | 効率的な配送ルートを設計。 |
集配センター担当 | 衣類の仕分けと管理を担当。 |
また、最近では、これは先述の業界課題を解決しようとする新しいデジタル職種も登場してきています。「伝統的な技術職」と「新しい職種」が融合している、とても興味深い業界なんですね。
クリーニング業界に向いている人の特徴
クリーニング業界では他の業界では見られない、独特のこだわりがあります。その一部をご紹介しましょう。
丁寧
「丁寧」とは表面的な振る舞いのことだけではありません。一着の服を手に取った時の状態の把握。シワを伸ばすアイロンの角度、襟の糊付けの強さ、ボタンの掛け具合。そういった些細な作法の一つ一つを大切にするのが、この業界の「丁寧さ」です。
責任感
預かった衣類には、必ず持ち主がいる。明日の約束、大事な面接、特別な記念日。その一着に、誰かの予定や希望が詰まっています。だから、約束の時間は必ず守る。品質に妥協は許さない。それがこの業界の人々の矜持です。
技術へのこだわり
シミの種類は千差万別。布地の特性は複雑多様。そこに立ち向かう技術は、日々進化を続けています。でも、最新の機械にも、経験を重ねた職人の手にも、等しく大切にされているのは、「より良く」という飽くなき追求の心なのです。
人との長い付き合い
実はこの業界、長く働く人が多く、顧客も定着しやすいという特徴があるんです。夕方になると必ず急ぎ足で飛び込んでくる会社員。土曜の午後に、息子の野球のユニフォームを持ってくる若いお母さん。長年通ってくれるお客様の好みを覚えている。そんな細やかな心配りの積み重ねが、やがて信頼となって実を結ぶのです。
効率性とのバランス感覚
実はこれが難しい。丁寧な作業は時間がかかる。でも、収益性も考える必要がある。価格と品質のバランスを両立できる考え方が必要なんです。
クリーニング業界で働く魅力
日々の暮らしを支えるクリーニングの仕事の魅力を3つのポイントにまとめました。
誰かの大切な一着に、毎日出会える
ウェディングドレスには、人生最高の日の輝きが染みついている。学生服には、卒業式の涙の跡が残っている。スーツには、大切な商談の緊張感が宿っている。一着の服に、人生の物語が刻まれている。その物語にほんの少しだけど立ち会えるのがクリーニング屋さんなのです。
人の生活と季節を感じる仕事
春の訪れは、コートの受付で感じる。夏の終わりは、浴衣の仕上げで知る。季節の変わり目が、衣類の種類で分かる仕事。だから、この業界の人は誰よりも敏感に、季節の移ろいを感じ取れるのかもしれません。人々の暮らしのリズムを感じられるこの仕事ならではの面白さです。
確かな技術が身につく
例えば、高級スーツや着物。これらは素材によって適切な洗浄方法が全く異なります。クリーニング業は、その専門知識と技術を持っています。素材知識のエキスパートとして一度身につけた技術は、一生の財産になります。
まとめ
私たちが実感している以上に、暮らしに欠かせない存在であるクリーニング業界。
その根幹にあるのは、共通して「お客様の大切な一着を、より美しく」という想いなのだと思います。
一着の服に染み込んだ、誰かの大切な記憶を守る。
そんな魅力的な仕事だということが、お分かりいただけたでしょうか。