中古車業界とは
まだ使える車を次の持ち主につなぐ中古車ビジネス
新車を買おうとすると結構なお金がかかりますよね。でも、車って一度誰かが乗ったからといって、すぐに使えなくなるわけではありません。むしろ、ちゃんとメンテナンスすれば、10年、20年と走ることができるんです。
この業界は、「まだ使える車を次の持ち主につなぐ」ことで、メリットを生み出しています。
「車を売りたい人」への提供価値
「新しい車に買い替えたいけど、今の車をどうすればいいの?」「車を処分したいけど、手続きが面倒そう…」こうした人たちに、中古車ビジネスは「買取サービス」を提供しています。
提供している価値
✅ 手軽さ:買取業者に持ち込むだけで簡単に売却できる
✅ 高額査定:状態の良い車なら思ったより高く売れることも
つまり、「いらなくなった車を、手間なくお金に変えられる仕組み」を提供しています。
「車を買いたい人」への提供価値
一方、車を買いたい人にもさまざまな悩みがあります。「新車は高くて手が出せない…」「できるだけコスパのいい車が欲しい!」こうした人たちに、中古車ビジネスは「リーズナブルな選択肢」を提供しています。
提供している価値
✅ 価格の手ごろさ:新車より圧倒的に安い
✅ 選択肢の豊富さ:廃盤モデルや個性的な車も見つかる
つまり、「高品質な車を、お手頃価格で手に入れられる市場」を作っているんですね。

こうして見ると、中古車ビジネスは、「売る人の不安」と「買う人の不安」を解消する架け橋のような存在だと分かりますね。
中古車業界のビジネスモデル
新車と違って、中古車は”モノが先にある”ビジネスなんです。つまり、誰かが使った車を次の人に届けるという循環型のビジネスモデルになっています。
中古車業界の基本的なビジネスモデルは、「仕入れ」と「販売」の差額で利益を得る仕組みです。
中古車流通の流れ
では、中古車はどこからやってくるのでしょうか?実は、みなさんが乗り換えた車が、様々な経路を通って次のオーナーに渡っていくんです。その流れを見ていきましょう。
- ユーザー(車の所有者)
- 車の買い替え時に下取りに出す
- 買取店に直接売却する
- 個人間取引で売却する
- ディーラー(新車販売店)
- 下取りで入手した車を自社で販売または業者オークションに出品
- 買取専門店
- ユーザーから買い取った車を自社で販売または業者オークションに出品
- オークション会場
- 業者間での取引が行われる中古車の一大市場
- 日本全国に約120箇所のオークション会場があり、年間約600万台が取引される
- 中古車販売店
- オークションで仕入れた車や直接買取した車を一般消費者に販売
- 輸出業者
- 日本の中古車を海外市場向けに輸出(重要な流通経路)

つまり、乗り換えた車は、そのままディーラーや買取店の店頭に並ぶこともあれば、オークションを経由して全国の中古車販売店に行くこともある。さらには船に乗って海外に渡ることもあるんです。
中古車業界のビジネスプレイヤー
では、実際にこの業界がどう動いているのかを見てみましょう。大きく分けると、中古車業界には以下のようなプレイヤーがいます。
① 中古車販売業者
消費者に直接中古車を販売する企業です。
- 大手中古車販売チェーン(ガリバー、ネクステージ など)
- ディーラー系の中古車販売(トヨタ認定中古車、ホンダU-Select など)
- 地域密着型の中古車販売店(町の中古車販売店)
- オンライン特化型販売業者(オートベル、SOMPOで乗ーる など)
② オークション業者
業者同士が車を売買する場を提供しています。
- 中古車オークション運営会社(USS、オークネット など)
- オンラインオークションプラットフォーム(オークネット、ASNET など)
- 輸出業者(海外向け中古車販売業者)
③ 買取専門業者
車を売りたい人や法人から車を買い取る企業です。
- 買取専門会社(アップル、ラビット、ユーポス など)
- 販売業者兼買取会社(ガリバー、ビッグモーター、ネクステージ など)
- ディーラーの下取りサービス(トヨタ、日産、ホンダ など)
- オンライン買取プラットフォーム(MOTA、ユーカーパック、カーセンサー買取 など)
④ 個人間売買プラットフォーム
中古車を「個人対個人」で売買できるサービスも増えています。
- 中古車情報サイト(カーセンサー、グーネットなど)
- 個人売買プラットフォーム(メルカリ、ヤフオク、ジモティー など)
- CtoCマッチングサービス(カババ、Ancar など)

それぞれのプレイヤーが役割を持ち、中古車市場全体を動かしているんですね。
中古車業界の主要プレイヤーと代表的な企業
日本の中古車業界には、多くの企業が存在し、それぞれ独自の特徴を持っています。以下に、主要な企業とその特徴をまとめました。
IDOM(旧ガリバーインターナショナル)
- 全国に広がる中古車販売・買取チェーンで、買取店の中で最大手
- 豊富な在庫と高い買取価格が特徴

ネクステージ
- 多様な車種を取り扱う中古車販売店を全国展開
- 新車ディーラー店も拡大展開中

USS(ユー・エス・エス)
- 日本最大の中古車オークション運営会社で全国18のオークション会場を展開
- 毎週約20,000台の車両が取引される世界最大級の会場を持つ

レッドバロン
- 中古バイクの販売店を全国直営300店以上展開
- オートバイ販売台数で世界トップクラス

トヨタユーゼック
- トヨタグループ唯一の中古車事業の戦略会社
- オートオークションを全国16会場で展開

バイク王&カンパニー
- 「バイク王」ブランドで中古2輪車(バイク)の買い取りで最大手
- 近年は小売り店舗を買い取り店に併設し、小売りを強化

プロトコーポレーション
- 中古車情報サイトの「グーネット」を展開
- 中古車業者からの広告掲載料やシステム利用料が収益の柱
レダックス(旧カーチスホールディングス)
- 中古車買い取りの大手企業
- 脱オークションを掲げ、買い取り直販を推進
ケーユーホールディングス
- 1972年設立の輸入車ディーラー、中古車販売の大手
- 多様なメーカーの新車・中古車を取り扱うトータルディーラーとして進化

オークネット
- 多分野で業者間のインターネットオークションを開催
- 中古車オークションをはじめ、中古バイク、中古PC、中古スマホなどを扱う

アップル
- 中古車の買取専門店として全国展開
- アジアへの中古車輸出事業が稼ぎ頭

システム・ロケーション
- 中古車ビジネスを支援するシステムソリューション企業
- 全国の中古車取引データを収集・統計分析した中古車価値算定システムを提供
TRUCK-ONE
- トラックやダンプなど中古商用車の買い取り・販売サービスを展開
- 特にオークションや国内運送業者、海外への販売が主力
オプティマスグループ
- 海外向け自動車総合サービスを展開
- ニュージーランド向け中古自動車輸出が主力。現地ではレンタカーサービスも展開
WECARS
- 伊藤忠商事を中心に2024年に新会社として設立
- 不祥事で経営危機となった「ビッグモーター」から事業承継

中古車業界の将来性
世界の中古車市場規模は拡大傾向にあると言われています。ここで、中古車業界の明るいトレンドを見てみましょう。
中古車登録台数の増加
2024年の中古車登録台数は、前年2023年を1.0ポイント上回り、2年連続で過去最高を更新しました。これは、新車の生産遅延や納期遅れが続く中、すぐに手に入る中古車への需要が高まったことが要因とされています。
中古車輸出の拡大
2024年には、中古車の輸出台数が2年連続で過去最高を記録する見込みです。特に、日本の中古車は海外でも人気があります。それは、日本車の品質の高さと、日本の厳しい車検制度により、比較的状態の良い車が多いためです。
所有から利用へのシフト
サブスクリプションモデルやカーシェアリングの普及が進んでいますが、これらのサービスの車両供給源として中古車が活用されるケースが多いんです。個人消費者だけではない中古車需要が増加しています。
中古車業界の課題
中古車業界は成長を続けていますが、実はいくつかの共通課題を抱えています。ここでは3つの視点から解説していきましょう。
信頼性の確保(業界の不正問題)
中古車業界では、「本当に信頼できるのか?」という課題が常にあります。
例えば、2023年に発覚したビッグモーターの不正問題が記憶に新しいですね。不正な修理請求や不正車検が問題視され、業界全体への不信感が広がりました。
- 車の品質や履歴が不透明(事故歴や修理歴が分かりにくい)
- 買取・販売時の価格が不透明(相場より安く買いたたかれる、または高く売られる)
- 企業のモラル(過度な利益追求による不正の温床)
こうした課題を取り除き、業界全体で「透明性の向上」が求められています。
例えば、車の整備履歴をデジタル化する「車両履歴の一元管理」や、消費者が簡単に車の状態を確認できるサービスの導入が進んでいます。
流通の非効率性(業者間取引の問題)
中古車は、一度売られてもすぐに消費者に届くわけではなく、業者間で何度も売買されることが多いんです。例えば、個人が車を売る → 買取業者が買い取る → オークションで販売 → 販売店が仕入れる → 消費者が購入する といった流れになっています。
これによって中間マージンが必要以上に嵩み、費者が購入する際の価格が上がってしまうという問題点があります。そのため、最近ではオークションを経由せずに直接売買できるCtoC(個人間取引)プラットフォームも登場しています。
環境負荷と持続可能性(EV・カーボンニュートラルへの対応)
日新車市場では電気自動車(EV)へのシフトが進んでいます。ただ、中古車業界では、EVの取り扱いが課題になっています。
- なぜEVの中古車が難しいのか?
- バッテリー劣化問題(EVの価値はバッテリーの状態に大きく左右される)
- 整備・修理の難しさ(EVは従来のガソリン車より修理が難しい)
- 再販市場の確立不足(EVの中古市場はまだ未成熟)
これに対し、EVバッテリーの状態を数値化して表示するサービスや、EV専用の中古車市場が生まれつつあります。
中古車業界の主な職種と仕事内容
一口に「中古車の仕事」と言っても、単に車を売ったり買ったりするだけではないんです。業界を支える主要な職種と、その仕事内容を見ていきましょう。
中古車販売スタッフ(営業職)
中古車販売員は単に車を売るだけでなく、お客様のライフスタイルや予算に合った車を提案することが求められます。お客様にぴったりの1台を提案するのがミッションです。
主な仕事内容
- 来店したお客様に車を紹介し、購入をサポート
- 価格交渉やローン・保険の提案
- 購入後のアフターサービス対応
買取査定スタッフ(バイヤー)
お客様の車を適正価格で買い取る役割です。この仕事のポイントは、「査定の目利き力」。同じ車種でも走行距離や修理歴、内装の状態などで価値が大きく変わるため、正確な査定が求められます。
主な仕事内容
- お客様の車の状態をチェックし、査定価格を提示
- 市場の相場を調べ、適正価格を決定
- 買取後の車をオークションや販売店に流通させる
整備士・メカニック
中古車は、新車と違って状態がバラバラです。そのため、しっかりと整備をして「安心して乗れる状態」にするのがメカニックの仕事です。
主な仕事内容
- 中古車を販売前に点検・整備する
- 修理や車検、部品交換を行う
- お客様の要望に応じたカスタマイズをする
オークションスタッフ(運営・査定)
この職種の人たちは、「中古車業界の裏方」として、スムーズな流通を支えています。
主な仕事内容
- 買取業者や販売店から出品された車を査定
- オークションの運営(落札価格の管理やバイヤー対応)
- 車の市場動向を分析し、適正価格を調査
商品管理・物流スタッフ
中古車は、店舗や倉庫、オークション会場など、さまざまな場所に保管されます。お客様が購入したら、スムーズに納車できるようにするのがこの職種の役割です。
主な仕事内容
- 仕入れた車を在庫管理し、適切な場所に配送
- ネット掲載用の写真撮影や情報登録
- 車のクリーニングやコーティング作業

こうして見ると、中古車業界には「売る人」「買う人」「整備する人」「流通させる人」など、さまざまな職種の人たちが関わっているんですね。
中古車業界の特徴
中古車業界にはちょっと独特な文化があります。特徴的な3つのポイントを解説していきましょう。
オークション文化と”目利き”の世界
一般の人は参加できない中古車の業界人向けのオークション会場では、毎日何千台もの車が取引されています。
まるで競馬のパドックみたいに、車が流れるように登場し、「これだ!」と思ったら一発勝負で入札します。人気のある車が出品されたら、わずか数秒で落札が決まることも。
一方で、オークション独特の駆け引きもあります。一瞬の判断で利益が出るか、大損するかが決まるので知識と判断力が物を言う世界なんです。
“仕入れたらすぐ売れ”
中古車業界には、「在庫はリスク」という文化があります。なぜなら倉庫代や管理費用など持っているだけでお金がかかり、何より「車の価値は下がる」からです。
そのため、業界では**「車は早く売ったもん勝ち」という考えが根強く、**大手のガリバー(IDOM)は「短期間で在庫を回す」ビジネスモデルを極めて大きく成長しました。
「クルマ好き」と「商売人」の共存
この業界の特殊なところは、「とにかくクルマが好きな人」と「とにかく稼ぎたい人」が共存している」こと。
たとえば、町の中古車店の社長は、「俺はこの車が好きだから仕入れたんだ!」と、利益度外視で仕入れることもある一方、大手の営業マンは、「この車、売れるかな?」「利益率は?」と、シビアに計算する。
でも、どっちの考えも間違いじゃありません。「車が好きだからこそ、お客様にもいい車を届けたい」「商売だからこそ、しっかり利益を出して成長したい」
そんな二つの気持ちが、中古車業界の独特な空気を作っています。

中古車は、同じ車種・年式でも値段がバラバラ。「今、この車はいくらで売れるのか?」が日々変わる世界だからこそ、このような文化が生まれたのですね。
中古車業界に向いている人の考え方
中古車業界の人たちの仕事は、単に「車を売る」「車を買う」だけではないんです。中古車業界の人たちがなにを大事にしているのか、重要なポイントを2つ紹介します。
正直であることの価値を知っている
この業界、かつては「何か裏があるんじゃないか」と思われがちでした。だから、「この車、いいですよ!」と売るとき、「この価格で買い取ります」と査定するとき。正直さが何よりの武器になります。
車の状態をきちんと伝え、ウソをつかないこと。それが長い目で見れば、信頼という最大の財産になると知っている人が向いています。
目の前の人の生活を想像できる
車を買うのは、多くの人にとって単なる移動手段を求めているわけではありません。その人の生活や夢が乗っています。
「子どもが生まれて、家族が増えたんですね。この車なら、週末のお出かけも荷物たっぷり積めますよ。チャイルドシートも楽に付けられるし、10年後には子どもと一緒にキャンプに行く、そんな日々が待ってますよ」
それがただの営業トークじゃなく、本当に相手に寄り添ったアドバイスになる。そんな想像力を持った人が成功する世界です。

中古車業界は、いま大きく変わっています。古いやり方にしがみつかず、新しい風を取り入れられる人が生き残っていくのかもしれませんね。
まとめ
中古車展示場の青空の下で整然と並ぶ車たちは、一台一台に誰かの記憶が染み込んでいます。
同じ1台でも、人によって「宝物」にもなれば、「在庫の山」にもなる。
その「車の価値を見極める目」が、この業界の人たちの誇りなのかもしれません。
車の個性と価値を見抜き、巡らせるこの業界の魅力をお分かりいただけたでしょうか。